【内装のプロが語る開業の心得】店舗のデザインを考える、その前に

      2016/03/30

「自分の店、自分の城を持ちたい」この気持ちは、開業を志す人でなくても、一軒家を立てるなど一般の人であっても、誰しも一度思うことです。頭の中で描く理想は、自分が憧れた、雑誌で見たあのお店のデザインだったりするでしょう。

おしゃれなカフェ風美容室

しかし、厳しい現実が立ちはだかっているのも事実です。今回は美容室や飲食店、アパレルなどどんな店舗経営者にも知っておいて欲しいことを、内装のプロの目線でお伝えします。

内装のプロが語る「開業の心得」

店舗デザインにおいて最も重要なポイントは「バランス力」。

ファッションやアートとは異なり、店舗の内装の場合、ただ見た目がオシャレなだけではお店は成り立たず、レイアウト、導線、設備、機能、耐久性などの様々な諸条件を全てクリアしていなければなりません。

これらはどれも欠かすことが出来ない必要十分条件であり、どこかだけ良くてもダメなのです。それらの条件をバランス良く計画することが非常に重要です。

見た目が美しくても機能が考えられていなければ、ただのオブジェとなってしまい、機能とデザインのバランスがとれていないことになります。よくお客様で「デザイン重視」という考えの方がいらっしゃいますが、実は機能とは立派なデザインです。無駄がなく使いやすいシンプルなiphoneを想像してみてください。使いやすく誂えられたものこそが、デザインとして真の価値を持ちます。

美容室のデザイン

オシャレなファサードにしたい気持ちは充分わかりますが、同時にお客様の入りやすさという機能性も考えてください。そうすればそのデザインは100%の価値を発揮することができます。

このように機能性やデザインなど、全ての条件がクリアになり、バランスがとれなければ良いお店は出来ません。

この最終的なバランスを導き出すには時間も労力も非常に掛かりますが、それにとことん付き合ってくれる内装会社も必ずいますので、そういう内装会社をパートナーにしましょう。

デザインが一人歩きでは絶対に成功しない

空間デザイン(内装デザイナー)とは、ファッションデザイナーが商品を市場に発信して需要を産み出すという流れとは違い、お客様の需要があって初めてスタートする仕事です。

即ち、お客様の考えや思いを内装デザイナーが理解して、同時に予算や立地、時代の流れなどの様々なベース条件も考慮しながら、質の高いデザインで、全体をまとめ上げていくものです。

私たちはファッションデザイナーやアーティストのような芸術家ではないのです。デザインする空間もアートキャンバスではありません。

美容室の開業心得

このポイントを無視し、デザインだけが一人歩きした様な提案をしてくる内装会社がよくありますが、必ずどこかに不備が出てきてしまいオープンしてから大変なことになってしまいます。単純にデザインだけを提案してくる内装会社を選ばないようにしてください。

コンセプトがないお店は潰れる

大量生産・統一規格の時代が過ぎ去り、コンセプトやデザインを重視する感性の時代が日本にもようやくやってまいりました。

お客様にこれまで以上のファンになってもらうお店創りの為に一番大切なのはコンセプトです。近年大ヒットを遂げている商品や事業を見れば分かる様に「コンセプト」が際立っています。

お店も同じで、何を、誰に売るのかはもちろんの事、客単価/ターゲット/立地/初期費用に至るまで、全ての要素を決定する基軸になるのが店舗コンセプトです。

まずは自分の理想のお店はどんなイメージか、どんな商品を売り、どんなお店として認知されたいのか。また、どんなお客様に来て頂きたいかという全体をイメージします。

美容室の内装のコンセプト

最終的には自分のお店に来るお客様(年齢や性別、服装や好み、人数等)が頭の中に描ければベストだと思います。※ビジネス用語でこれを「ペルソナ」といいます。

コンセプトが曖昧だとお客様に何を売っている店なのか認知してもらえないばかりか、そこで働く従業員でさえも、だれに何をどの様に売ったらいいのかわからなくなります。

この様にコンセプトは、あるべき姿が明確に描かれていれば人を動かす力をもっているのです。

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